杉原邦生 演劇ワークショップ in 札幌 レポート

ワークショップ・シリーズ第5回目は札幌市文化教育会館リハーサル室Aで開催しました。シェイクスピアや歌舞伎演目などの古典から新作現代劇まで、様々な戯曲を独自の解釈と繊細かつダイナミックな演出で上演している杉原さんを講師にお迎えし、演劇の基礎ともいえる〈身体表現〉と〈戯曲読解〉を体験するワークショップを行いました。

 

今回のワークショップでは午前10時~正午(昼12時)に〈身体表現〉を、午後2時~5時に〈戯曲解読〉を学ぶプログラムを実施しました。障害の有無に関わらず、演劇に関心がある方々が集まりました。

 

〈身体表現〉では、セリフを使わずに日常の動きをスローモーションで行うことに取り組みました。ウォーミングアップ後、座った状態から立ち上がるまでの動作を5分かけて行いました。その後、会場を自由に歩き回り、夜空を見上げるなど様々な動きにチャレンジしました。

 

そこで杉原さんから「ゆっくり動くことで、普段の動き以上に丁寧になっている」と指摘されました。例えば声をかけられて振りむく場面では、みんな顔と体を同時に動かしていました。実際の動きでは、耳で音を聴いた後、まず目線を音の先に向け、その後体が反応するはずです。アドバイスを受け、参加者も徐々に自分の身体と対話しながら動くようになっていきました。

 

 

〈戯曲解読〉では、初めに台本の読み合わせを行いました。台本はウィリアム・シェイクスピア作の『ハムレット』の一部です。読み合わせ後、難しいセリフや時代背景、登場人物の関係性について、参加者自身で解読することにチャレンジしました。

 

 

次に二つのグループに分かれ、参加者自身でそれぞれの役を決め、何回か練習した後、発表。杉原さんが参加者の考えやアイデアを尊重しながら、演出を指導することで、難しい役をナチュラルに演じることができたり、チームワークが上手く出たり、と個々の魅力が引き出された発表となりました。

ワークショップ終了後、講師の杉原邦生さんから感想をいただきました。

―障害のある方も参加されるワークショップは初めてと伺いましたが、いかがでしたか?

僕がいつも心掛けているのは、どういう年齢の人であれ、出自の人であれ、演劇という土俵の上では対等にやることです。今回も、分かりやすい言葉で伝えようとか、多少参加者にあわせた対応はしましたが、特別いつもと違うことをした印象はなかったです。そのおかげで参加者の人達も、いつも通りやってくれていたと感じています。

 

―障害のある方もそうでない方も一緒になって演劇に取り組むことについて、どう感じられましたか?

色んな人が演劇という場で、コミュニケーションをとって、演技に取り組んでいくことで、ボーダーラインがなくなっていると感じて、すごく良いなって思いました。色んな人が入り乱れて交流し、会話できる場は演劇ならではだと思いますし、それがワークショップでの意義というか、意味だと思います。もしこのワークショップに発展形があるとして、長い期間で作品を創ってみるところまでいけると、新たな発見があって、更にそれを見る観客という第三者の発見が入ってくると、多くの人に僕らが今やっていることの波紋が広がっていくと思います。

 

 

「舞台上での動きは、一つひとつ大きな意味を持っています。観客が求めているものは役者のキレイな動きではなく、役者の動きの意味するところです。そこを忘れないように。」

杉原さんから贈られる舞台の上での心構えや激励。年齢も演技経験も障害種別も違う人たちでつくりあげる『ハムレット』の1シーン。演劇を通して会場から生まれてくる独特で力強いエネルギーを感じた1日でした。

                                 

 

写真|冨田了平
レポート|日本財団DIVERSITY IN THE ARTS 奥本